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いつも心に太陽を


TO SIR, WITH LOVE

1967年アメリカ・イギリス合作映画 コロンビア
カラー 105分
 
監督 ジェームズ・クラヴェル

出演 シドニー・ポワチエ クリスチャン・ロバーツ
 ジュディ・ギーソン ルル 
スージー・ケンドール


通信技師の資格を持ちながらも、就職難で喘いでいたサッカレーはロンドン下町の中等学校にようやく教師の職を得る。彼が受け持ったのは、最上級生ですっかりやる気なしの荒れきったクラスだった。本を読ませれば満足に読めない。先生をからかう、悪戯ばかりする。すっかり切れたサッカレーは、彼らを子供として扱うのをやめて、一人の大人として品性ある立ち居振る舞いを教え始める・・・。


シドニー・ポワチエが一番充実していた時代の心温まる映画です。シドニーが扮するのはロンドン下町に赴任した教師。但し、教職を天職と思っているわけではなく、通信技師として生計を立てたいのに就職難のために仕方なしに教師をしているという境遇。チャンスがあれば、いつでも教師を辞めて
通信技師としての職を得ようと教職の傍ら求職活動にも余念がありません。おまけに彼が受け持ったのは、荒れた学校の中でもさらに荒れた最上級生のクラス。先生を馬鹿にしきっていて、学力は低く品性のかけらもない。そんな彼らに業を煮やしたサッカレーは彼らの再教育を始めます。もうすぐ社会に出ていく生徒たちに、まずは人間としての品性を教えるのです。自分を「先生」と呼ぶことを要求し、女生徒たちには品格を求め「ミス〜」と呼ぶことを男生徒に要求する徹底ぶり。その彼の態度がまず女生徒たちを少しずつ変えていきます。特にパムはサッカレーにほのかな恋心を抱きさえし始めます。サッカレーは人間性を磨くと同時に、実生活に即した教育も施そうとします。自活したときのためにサラダの作り方。女生徒には品位あるお化粧の仕方を教えてくれるように同僚の女教師に頼みます。サッカレーが良くある体当たりの熱血教師でなく、あくまで理性的であるところがこの映画の面白い点ですね。情熱教師ものでもひと味違った作風が感じられるのです。

生徒たちが住むのはロンドンの下町。学校を出ればイーストエンドでの労働者としての生活が待っています。厳然と存在する階級社会の中で彼らの前に敷かれたレールは決まり切ったもので、彼らはそれから脱出することが出来ません。若くして人生に大した希望を見いだせない彼らは、せめて学校時代だけでも羽目を外すことで鬱憤を晴らしているのでしょう。サッカレーも貧しい生まれでしたが、その環境から逃れるべく勉強に励んだという過去があったのでした。だから、彼は生徒たちの環境や心理が理解出来るのです。

生徒たちに世界の様々な文化や歴史を見せたいとサッカレーは、課外授業を催します。その日の生徒達は一様に今までと違ってこざっぱりした服装で登場。初めて見る様々な歴史的遺物に驚きを隠しません。生徒達の見学シーンにかぶさる「TO SIR, WITH LOVE 」のテーマソングが秀逸です。何回見てもこのシーンは好きです。

彼ら自身正直言って決して恵まれた環境の出身とは言えないのに、その中でも更に差別は存在します。黒人のクラスメートの親が亡くなった時に、弔花のカンパはしてもそれを持ってお葬式には行けない。何故なら、彼らは白人で黒人の家には行けないから・・・。それは同じく黒人であるサッカレーにも現実を認識せざるを得ない出来事でした。でも、サッカレーの人間性の素晴らしさは肌の色なんかとっくに超越して、先生にも生徒にもすっかり認められているのです。

「真心って通じるものなのね」とパムが言う通り、サッカレーの思いは生徒たちにしっかり通じます。生徒たちは自分たちを縛る世間体や偏見の壁を自ら乗り越えます。そして、ラストのダンスパーティ。泣けます・・・。人を信じることも良いことがあるかな、とちょっと思わせてくれる素敵な映画です。好きな作品の一本です。


☆60年代ファッションと60年代ダンスが今見ると古いけれど何だかそこはかとなく新鮮でもあります。






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