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暗くなるまで待って



WAIT UNTIL DARK


1967年アメリカ映画 ワーナーブラザーズ
カラー  109分

監督 テレンス・ヤング
出演 オードリー・ヘプバーン アラン・アーキン
リチャード・クレンナ
エフレム・ジンバリスト・ジュニア
ジャック・ウェストン


カメラマンである夫のサムが見知らぬ女性から預かった人形。実はその中には大量のヘロインが隠されていた。その行方を追うロートは、人形を預けた女性の仲間だったマイクとカーリノを強制的に仲間に引き入れて、サムの家を探し回る。そこに帰ってきた妻スージーが盲人だということを知り、人形の隠し場所を知るために、3人は入れ替わり立ち替わりスージーの前に現れて一芝居打つ。何も知らないスージーは、彼らに翻弄されるが・・・。


舞台となるのはほとんどスージーのアパート一室。そして、スージーは盲目。夫は仕事で出かけている。そんな状況を知って、我が物顔に人形の行方を突きとめるためにあの手この手でスージーを混乱させる3人の悪党の物語とでも言えば良いでしょうか。しかし、スージーも盲人独特の勘を働かせて彼らの思惑を知ろうと対抗します。ハンディを背負った女性と、いわば犯罪のプロ集団の一騎打ち。果たして勝つのは??とにかく、細部までとても良くできた話です。脚本の練り上げが見事ですね。ちょっとした小技が効いていて、スージーが負うハンディならではの別の鋭さがしっかり発揮されています。3人のあの手この手も実に念が入っています。でもこの3人は、決して一枚岩ではない。そういった要所要所が見る者をどんどん惹き付けずにはいられません。

この映画はオードリーの引退映画となりました。50年代から、ハリウッドに咲く白いヒナギクのように開花し続けたオードリー。この映画を最後に第一線から退きました。結局、70年代半ばに「ロビンとマリアン」でカムバックしますが、その間の年月はやや大きかった・・・。若く輝いていたオードリーを見るにはこれが最後の映画と言えるかもしれません。目の見えないハンディに負けじと頑張る姿、でもそのプレッシャーに時に押しつぶされそうになる辛さ、をオードリーは繊細に演じて見せます。そして、見事な勘で自分のまわりのもつれた犯罪の糸をときほぐしていくのです。最後には、有名なオードリーの精一杯の闘い。ハンディも使い方では味方になるというちょっと勇気を持てるメッセージかもしれません。

オードリーの元に、夫のサムの旧友だと言って何度か出入りするマイク。オードリーの危ないところを救ったところから、すっかり好感を持たれ夫が留守の間の頼れる存在となります。でも、勿論ロートの仲間。でも本人はロートのことを快く思っていないという複雑な心境の知的雰囲気を醸し出すマイクはこの映画の中でも希有な存在でした。そのマイクを演じたリチャード・クレンナ。この役でまだ高校生だった私をノックアウトしてくれました。悪になりきれない悪役。オードリーを前に苦悩するさまなど、見ていて可哀想になるほど。彼の演技は絶賛され、更に名前を高めることになります。そして、私はクレンナさんファンの道へズボズボ入り込むことになるのです。

悩める悪役マイクに反してロートは血も涙もない悪役の代表。ヘロインを手に入れるためなら人殺しも躊躇しない冷徹さです。彼もまたオードリーの前に手を替え品を替え登場し、煙に巻くのです。とにかく最後の執念は凄い。ロートを演じたアラン・アーキンが飛ぶところでは心臓が止まりそうになりました。こら!目の不自由な人をいじめるんじゃない、と杖で頭を叩いてやりたくなるような嫌な男ぶりでした。

元刑事で道を外れてしまったジャック・ウェストンも面白い。クレンナさんと連んで渋々ロートの仲間に入ったものの、やっぱりどこか割り切れない。でも、お手の物の刑事役でオードリーの前に現れます。尋問しながら、せっせとあちらこちら拭いている様がおかしい(笑)。これは何故かって?言わない方が面白さ倍増でしょう。

夫役のエフレム・ジンバリスト・ジュニアは「F.B.I.」で名前を挙げた人。盲目の妻に、時には厳しく接して何とか妻の自信を取り戻させようとする姿がちょっとジーンと来ます。

それに、スージーを助ける同じアパートの孤独な少女グロリアの活躍も見逃せませんね。ガールスカウトのクッキーや、ガラガラと格子を叩いて出かけていく様子などあっぱれ。

元は大ヒット舞台劇だけに、密室サスペンスの中でも超一流でしょう。このきめ細かさは一度見て堪能して戴きたいものです。


☆そもそも、旦那がお人好しにも人形を預からなければ良かったんだけれど・・・。






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