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失われた週末



THE LOST WEEKEND


1945年アメリカ映画 プロパラマウント  モノクロ 101分

監督 ビリー・ワイルダー

出演 レイ・ミランド ジェーン・ワイマン
フィリップ・テリー ドリス・ダウリング
ハワード・ダ・シルヴァ フランク・フェイレン


ぱおー。アカデミー賞を4部門受賞した問題作であります。カンヌのグランプリも取っています。

売れない作家ドン・パーナムはアル中でどうしようもない男。重度のアルコール依存症なのであります。周囲がどんなに彼を立ち直らせようとしても、全く効果なし。ちょっと目を離したスキにお酒を飲んでしまうのであります。行きつけの酒場でも彼の病気は知れ渡っています。いよいよお金がなくなり、商売道具のタイプライターすら売ろうとしてしまいます。でも祭日なので売ることができず、途方に暮れます。そこまでしてお酒を飲みたいかと思うのですが、病気なのだからしょうがない。そして彼は町をさまよううちに気を失ってしまい・・・

ものすごくリアルな映画です。見ていて楽しい映画ではありませんが、そのテーマの重厚さとあまりのリアルさにぐんぐん引き込まれてしまいます。演出も、素晴らしいの一言。冒頭で、お酒の瓶を隠すために窓から外に吊しているのですが、そのショットがよすぎて、ついつい映画の中に引きずり込まれてしまうのであります。

アル中についてはよくわかりません。でも、身も心もぼろぼろにして人生を台無しにしてしまうことはわかります。作家にとっては命にも等しいタイプライターまで売ろうとするのですから、もう本当に病気としか言いようがありません。そこまで行ってしまう前に何とかならなかったのかと思うのですが、努力とか根性だけでは何ともならない世界なのでしょう。当時のアメリカでアルコール依存症患者を救済するための方策がどの程度おこなわれていたのかはわかりませんが、今だったらすぐに矯正施設に無理にでも送り込まなければと思います。

もともと人生がうまくいっていたら、そこまでのアル中にならなかったかもしれません。小説が売れない。人生がうまくいかない。だからついお酒に頼ってしまう。そしてますます人生がうまくいかなくなる。まさしく悪循環。泥沼であります。このあたりは見ていて身につまされ、ボクはお酒は飲まないのですが小説は書くので、他人事とは思えませんでした。

レイ・ミランドはこの映画でオスカーを受賞。それまではどちらかと言えば大根役者と言われていたらしいのですが、そうは思えないほど迫真の演技です。それは何よりもビリー・ワイルダーの演出のすばらしさによるものかもしれません。エンターテインメントとは到底言えない作品で、見ていて楽しいものではありませんが、映画ファンなら一度は見ておくべき映画だと思います。反戦だとか環境保護だとか大上段に構えた映画ではありませんが、身近な問題なだけに鬼気迫るものがあります。最近のド派手なSFX映画に食傷気味なら、たまにはこんな作品を見て人生について考え、複雑な気分になるのもいいかもしれませんね。

☆アル中ではありませんが、ボクはコーヒー中毒。家にいても出掛けていても、コーヒーが飲みたくてしょうがありません。特に外食をすると必ずコーヒーをオーダーしてしまいます。そんなボクにべべちゃんも少々あきれ顔。人生を台無しにしたりパソコンを売ったりしないから、許してね。






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