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ホワイト・クリスマス



WHITE CHRISTMAS


1954年アメリカ映画  パラマウント
カラー 120分

監督 マイケル・カーティス

出演 ビング・クロスビー ダニー・ケイ
ローズマリー・クルーニー ヴェラ=エレン
ディーン・ジャガー


1944年、戦場のクリスマス・イブで151師団は束の間のクリスマス・ショーを楽しんでいた。歌うのは有名な歌手のウォレス大尉。師団を率いるウェイバリー少将はこの日、去ることになっていた。部下に慕われた少将の勇退を部下たちは起立して見守る。
戦後、戦友のデイビスと組んでウォレスはさらに人気のある歌手になっていた。ある日、元戦友の妹というベティとジュディのヘインズ姉妹と出会い、ひょんなことから彼女たちがステージに出演するヴァーモントのホテルにやってくる。しかし、クリスマスの時期だというのにもう68日間も雪が降っていないというヴァーモントは観光客もまばらで、ホテルも閑古鳥が鳴いていた。さらにびっくりしたことにこのホテルの経営者は、戦時中の上司ウェイバリー少将だった!何とかホテルに人を呼ぼうと、ウォレスたちは大がかりなショーを計画する。一方で、ウォレスとベティの間にはほのかな愛情が芽生えていたが、行き違いからベティはニューヨークに去ってしまう。ウォレスは人気テレビに出演して、かつての戦友たちに少将のホテルに集うように呼びかけるのだが・・・。



アメリカで一番売れた歌(レコード)は何だか知っていますか。これもいつかは変わっていくんでしょうが、今のところはビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」だそうです。クリスマスの定番中の定番。学生時代、音楽の教科書にも載っていた本当に美しい曲です。これはアーヴィング・バーリンが作った傑作中の傑作の曲と言って間違いはないでしょう。でも、この曲はこの映画で有名になったわけではなくて、42年の「スイング・ホテル」という映画でやはりクロスビーが歌って大人気を博した曲です。そのタイトルを冠して、パラマウントが威信を賭けたヴィスタビジョン第一作として製作されたのがこの映画です。

ストーリーはいきなり戦場から始まります。まあ、セット丸わかりのあまり緊迫感がない戦場ではありますが、この時勇退するウェイバリー少将が全編のカギを握る人物となります。

ストーリーはズバリ言って人情物です。部下に愛された上官。でも、戦争が終わったら少将までいった偉い人でも他に活躍の場はなく、田舎の小さなホテルをひっそり経営する生活です。それでも生活は火の車。少将は密かにもう一度軍隊に戻りたいと希望を出しているのですが、老齢を理由にその夢も叶いません。この時、戦争が終わって10年近くが経とうとしていましたが、同じような悩みを抱えた人は多かったのでしょうね。戦争は全てを変えてしまいます。中には軍隊が性に合っている人もいたでしょうし、そこで英雄になればなるほど実社会とのギャップが強くなって、一社会人として生きていくのはなかなか辛い。ビング・クロスビーがテレビで少将の苦境を訴えるのに歌う歌は、なかなか皮肉が効いています。「かつて戦争で少将や大将になった偉い人を雇って、部下として使いたい経営者がいるか?」
ベトナム戦争後の映画は、戦場からの社会復帰を実に辛辣に描いていましたが、この頃はそれでもまだどこかこんなほのぼのと人情物にしてしまえたのですね。

ビング・クロスビーはもう説明の必要もないでしょう。アメリカ最高の歌手という声もある大御所中の大御所です。ダニー・ケイも喜劇を得意としたほのぼの系の名役者。確かにこの二人が組めば悪い人には見えません。二人とロマンスに落ちる姉妹役はローズマリー・クルーニーとヴェラ=エレン。ローズマリー・クルーニーは「カモナマイハウス」で一世を風靡した歌手ですね。歌のうまさはさすが。今はジョージ・クルーニーの伯母さんと言った方が「なるほど」と思ってもらえるのかな(笑)。ヴェラ=エレンはMGMミュージカルに良く出ていたピチピチしたところが魅力のキュートなアメリカンガールです。スタイルが良くて、彼女のダンスは必見ですね。それから、ちらりとその他のダンサーにジョージ・チャキリスが出ていてびっくり!探してみて下さい。

クライマックスはこうなるだろうな、とお定まりではあるんですが泣けてしまいます。少将のために集った昔の部下たち。その間を軍服を着て背中をピンと伸ばして歩いていく少将に、普段ホテルの雑用をしている面影はありません。

それから、ラストシーンはとにかく綺麗。女性たちの赤と白のサンタドレスもとても素敵です。
これを見てると絶対に一緒に歌いたくなることでしょう。「ホワイト・クリスマス」を。

☆戦友は特別って聞きますが、本当にそうなんだな、ってしみじみ思う作品でもあります。






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