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素晴らしき哉、人生!



IT'S A WONDERFUL LIFE


1946年アメリカ映画 RKO
白黒 130分

監督 フランク・キャプラ

出演 ジェームズ・スチュアート ドナ・リード 
ライオネル・バリモア ヘンリー・トラバース
トーマス・ミッチェル ウォード・ボンド


クリスマスの夜、人生に絶望して川に身投げしようとしていた男がいた。彼の名はジョージ・ベイリー。小さな町ベッドフォード・フィールズで生を受け、人の為に尽くす父親の元で育ち、大学に行く夢もヨーロッパに行く夢も捨てて、この小さな町の家を持ちたい人々のために細々と住宅金融組合を運営してきた男である。家庭には美しい妻メアリーと可愛い子供たちがいて、ささやかな幸せで満足していた彼だったが、この日大金をなくしてしまって絶体絶命の危機に陥る。そのジョージを見守る天から、天使見習いのクラレンスが送り込まれ、ジョージを救う使命を帯びる。クラレンスは、ジョージが生まれていなかった世界を見せて、彼がいなかったら世の中がどうなっているかを見せていくのだった。


アメリカではクリスマスには必ずと言って良いほど、テレビで放映されるクリスマス映画の定番中の定番です。ジョージの人生は何かとついていません。4年間働いて学費を貯めて、いざ大学へと思ったら父親が亡くなり、父の経営していた住宅金融組合を継がざるをえなくなります。先に弟のハリーが大学に行き、ハリーはフットボールの名選手として名をはせたあと金持ちの令嬢と結婚して彼女の父親の事業を継ぐことになり、今度こそハリーに金融組合を譲って大学へ、と思っていたジョージの計画はご破算になります。それでも、幼なじみの美しいメアリーと結婚して今度こそ幸せを、と思ったら、ハネムーンに出かける間際に金融組合で取り立て騒ぎがあり、新婚旅行の費用を人々に貸し付けしてしまいます。ジョージとメアリーのハネムーンは、結局いつも幽霊屋敷と呼ばれていた屋敷で、でも友人たちの心づくしがある温かいものでした。素晴らしい家族と友人たちに恵まれてジョージの人生は、ささやかではあっても幸せなものだったのですが、遂に彼は絶体絶命の危機に陥るのでした。彼の運命は徹底的についていないのでしょうか?


自分の存在価値について中学、高校生の頃良く考えました。私はなかなか自分に存在価値があるとは思えなくて、地球上の酸素を減らすためにだけ存在しているのではないかと思っていました。もし、この頃この映画に出逢っていたら、私は自分の価値観を変えることが出来たでしょうか。

ジョージは平凡な人生を送っているようではあっても、子供の頃から正義感に満ちた子供でした。たとえば息子の死で悲嘆に暮れる薬剤師が間違って調合した薬について、怒鳴られようと殴られようとその薬を届けずに、それが間違った調合であったことを指摘したように。大人になっても燃えたぎる正義感は消えることなく、町の有力者ポッターに高給を提示されての引き抜きさえも蹴ってしまう。でも平凡だけれど、私にはとても満ち足りた人生に思えました。それに、その大らかで人懐っこい人柄から友達も大勢います。しかし、こうも言えるのです。平凡で幸せな人生を送るには、自分の夢を犠牲にしなければならないこともあるのだと。

さて、天使見習いのクラレンス。ジョージを救えば、翼をもらえるとあって大張り切りでやってきますが、一度自殺を決意した男の気持ちを翻すのは容易ではありません。ジョージは今までの運の悪さを嘆き、自分の存在価値を認められなくなっていました。なくした多額の金の担保になるのは自分の生命保険だけとあって、自殺を考える彼の気持ちは、この不況時代の日本で生命保険での収入を最後の頼りに自らの命を断っていった多くの一家の大黒柱たちを彷彿とさせられてとても辛くなってしまいます。

クラレンスの見せたジョージの存在していない世の中は何もかも違っていました。町は有力者ポッターに牛耳られ、人々は自分の家を持てず、命を救われた筈の人々は命を落とし・・・。そして妻のメアリーは、寂しい人生を送っていたのです。このメアリーのエピソードに関しては正直なところ、ジョージがいなければ結婚できずに寂しいひっつめ髪のオールドミス生活を送っていたということで、ちょっとしっくり来ませんでした。メアリーほど魅力的な人がジョージがいなくても結婚できなかったとは思えないし、それにあんな寂れた中年婦人になる姿というのはちょっと納得できないんですね。まあ、十歩譲ってジョージがいなければ愛する人に出会えなかったと理解することにしています。

「一人の存在が大勢の人生に関わっている。その存在は埋めがたい」という台詞がとても心に残ります。自分では大した価値がないと思っている人生でも、自分では気づかないうちに沢山の人の人生を左右していることがあるのかもしれませんね。それを考えると、言動は慎重にしなければ、と思ってしまいます。

自分では不運と思っていたジョージですが、彼は沢山の友人たちの愛に囲まれます。ラストは予測がついてはいても、やっぱり泣いてしまうのでした。まだもう少し、人々の善意や愛を信じても良いのかな、正義は勝つのかな、とちょっと思わせてくれる良い話です。


☆1920年代後半だというのに、もう体育館の床の下はプール、なんて構造が高校に出来ていたんですね。アメリカの発展ぶりをまざまざと見せつけてくれる映画でもあります。






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