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未来惑星ザルドス



ZARDOZ


1974年 イギリス映画 108分

監督 ジョン・ブアマン

出演 ショーン・コネリー シャーロット・ランプリング
サラ・ケステルマン サリー・アン・ニュートン
ジョン・アルダートン


ぱおー。ぱおぱお。おもいっきりマニアックな映画を選んでごめんね。

この映画は「脱出」「ポイントブランク」などで有名なジョン・ブアマンのSF映画。ものすごくヘンな映画です。公開当時は難解でさっぱりわけがわからないことで評判になりました。日本では映画の冒頭に用語解説をつけたんだけど、それを読んでもさっぱりわからないことにかわりはありませんでした。

核戦争によって荒廃した未来世界。ほんの一握りのエリートたちはボルテックスというコミューンを作り、ほかの人々を排除してそこで不老不死の生活をしていました。ボルテックスの中は理想郷のようなのですが、外の世界は荒廃したまま。ブルータルスという半ば野生化した人々が細々と生きているのですが、ザルドスという巨大な人面岩のような神が定期的に空を飛んできては、手下のエクスターミネイターたちに銃を与えてブルータルスたちを殺戮させていました。

ところがあるとき、ザルドスはブルータルスたちを殺すのをやめて、彼らに農耕をさせることをエクスターミネイターたちに命じます。ザルドスはその収穫を回収していくようになったのです。それに疑問を持ったエクスターミネイターのゼッドは収穫物にまぎれてザルドスに乗りこみ、ボルテックスに潜入します。

死後に行く楽園であるとザルドスに教えられてきたボルテックス。そこには不老不死で眠ることを知らない人々が住んでいました。彼らはゼッドをつかまえ、即座に殺すか、あるいは研究対象として生かしておくか協議します。投票の結果、彼は生かしておかれることになり、フレンドに引き取られます。

水晶片を額に埋め込み、それでもってボルテックスと接続し、互いに精神と精神で結びつけられた人々。どんなに重い罪を犯しても殺されず、ただ加齢されて年寄りのまま永遠に生きなければならない反逆者たち。ゼッドは途方もなく奇妙な世界を見て回るのですが、彼を引き取ったフレンドは反逆者の烙印を押され、加齢されてしまいます。

ゼッドを危険視していたコンスエラを筆頭にしてゼッド狩りがはじまるのですが、ゼッドは進化の袋小路に陥ってしまったエリートたちが持ち得ない超能力を駆使して逃げおおせます。コンスエラはゼッドを殺そうと執拗に追いかけるのですが、いつしか彼に惹かれていきます。そして、ゼッドはとうとうボルテックスの中枢を破壊することに成功し、それからゼッドの仲間たちがやってきてボルテックスに侵入し、エリートたちを次々に殺戮しはじめます。不老不死に飽きていた人々は我先にとエクスターミネイターたちに殺されようとしていくのでした。そして殺戮を逃れたゼッドとコンスエラは洞窟に住み、子供を産んで、年老いて死んでいくのでした。

てなあらすじなんだけど、これだけじゃほとんど何のことやらわかんないですよね。何の予備知識もなしに見たらもっとわかんないし、公開当時に出版されたジョン・ブアマン自身による小説版も難解でした。だったらそんなものどうしておすすめ映画にするのだと言われそうですが、ちゃんとわけがあるのです。

わけがわかんないなりに、この映画は観客に訴えるものをちゃんと持っています。映画そのものは観客を無視しているとしか言いようのない代物なのですが、人類の進むべき未来について、ジョン・ブアマンは非常に示唆に富んだ考えを提示しています。その他おおぜいを排除して、地域の限定された理想郷に閉じこもり、その外で過酷な生活を強いられる人々を奴隷にして生きているエリートたち。この二極分化は絵空事ではありません。そして、どんなに罪を犯しても死ぬことができない人たち。いくら死にたくても、それを許されず、ただ退屈しながら生きつづけなければならない苦しみ。

むかしの映画ですから、今見ればちゃちなところが目立つでしょうが、演出が独特で、何とも言えない雰囲気を出しています。まるでドラッグであっちの世界に行っちゃってるような映像は今見ても新鮮に映るのではないでしょうか。この映画の構想を聞いて気に入ったスタンリー・キューブリックが、ジョン・ブアマンに「2001年宇宙の旅」の撮影監督ジェフリー・アンスワースを紹介したそうです。というわけで、映像そのものはとても美しかったのを憶えています。もっとも、テレビで見るとその片鱗すらもわからなかった。

ショーン・コネリーが全編赤フンドシいっちょうでがんばっているところがすごい。それから、なんと彼の女装シーンまであります。「猿の惑星」の人間狩りのシーンや、「2001年宇宙の旅」のラスト、老人となってベッドで死んでいくボーマン船長のシーンを思い出させる場面などがちりばめられていて、もうめちゃくちゃ。見終わったあと、わけがわかんなくて後味が悪いかもしれませんが、どのシーンがどのSF映画へのオマージュなのかを探るだけでも、映画ファンにはおもしろいと思います。

日本ではヒットしなかったようですが、文学好きのフランスでは大ヒットしたそうです。それもなんとなくわかるような気がする。SF映画ではありますが、娯楽作品ではない、気楽には見られない映画です。それでも挑戦してみたいという方はぜひどうぞ。でも夢でうなされてもボクは知んない。

☆巨大人面岩のザルドスは、このホームページのおすすめ本のコーナーでも紹介している、ある子供向けファンタジー作品が元ネタになっています。ヒントは綴りにあります。さて、それが何か、あなたにはわかりますか? ネタバレになるからここには書けないんだよお。





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